具体のこと

「ええやないか「具体」世界一や」
ということ
からこの本ははじまる。

この本は、これまでの美術の概念にとらわれず新しい視点から追求し続けた美の挑戦者たちの物語である。しかし、従来の美術の本とはちょっぴり違う。
私の視座で勝手に見て解剖したもうひとつの具体の本である。
例えば、元永定正さんは、1955年の夏、兵庫県芦屋市芦屋浜の松林で開かれた
「真夏の太陽にいどむモダンアート野外実験展」誘われたが、お金が無い。
そこで10円で買った長いビニール袋に公園の水道水を入れて松の木にぶら下げた。
これを見た吉原治良先生は「これは水の彫刻だ!」と言って褒められた。
吉原先生は、「今まで見たことのない、どこにも無いものをつくれ」と言った。
「具体誌」一号には「われわれはわれわれの精神が自由であるという証を具体的に提示したいと念願しています」という吉原先生の言葉がある。
具体美術の仲間たちは①ビンに絵の具を詰めて投げつけたり②天井からロープを吊り下げてつかまり、素足でかいたり③ソロバンや番傘で描く、④オモチャの自動車を電気仕掛で走らせて描いたり、オートマチックに制作した。⑤村上三郎さんはハトロン紙のフスマ10枚を体ごと破いて音の出る作品をつくった。
これは、物質を用いた表現ではなく、物質+行為の表現である。
私は、1965年から具体に侵入して、作品を出品し、体験・交流などを重ね、取材を続けて凡そ40数年。そこで「具体」を書いてみた。

著者・藤野忠利

Fujino, Tadatoshi